インプラントといえば「治療費が高額」というイメージが強い方も多いのではないでしょうか?通常、虫歯や歯周病になった場合、小学校入学から70歳までの健康保険の被保険者の方は「療養の給付」といって、保険証をお持ちであれば治療費のうち3割の負担金を支払うことで一般的な歯科治療が受けられます。
それに対して、インプラント治療のほとんどが保険適用外の自由診療のため、治療費の全額を負担する必要があります。ただし、2012年にインプラント治療の一部が保険適用となり、限られた症例については虫歯や歯周病と同様に、負担金を支払うことでインプラントの治療が受けられるようになりました。
保険適用と保険適用外の治療は何が違うのか
健康保険が適用になる治療と適用とならない治療がありますが、その違いがはっきり分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
健康保険が適用になるのは、一般的に病気やケガの治療です。歯科診療でいえば、美容を目的とするホワイトニングや予防を目的としたメンテナンスなどは健康保険が適用になりません。
健康保険が適用になる治療であっても、使用する歯科素材によって保険が適用にならない場合もあります。
インプラント治療のほとんどは自由診療
2012年よりインプラントが保険適用となりましたが、健康保険が適用となるには条件があり、ほとんどのケースで保険が適用となりません。虫歯や歯周病が原因で歯を失った場合など、大半のケースは条件を満たしませんので自由診療となります。
このような保険外診療は治療費の全額負担が必要な上、診療報酬に法的な制限がない「自由診療」となるため、歯科医院ごとに治療費を決定することができます。さらに、インプラントは治療期間が長く、インプラントの埋入や骨造成などの外科手術が必要になるため、他の歯科治療に比べて費用が高額になってしまうのです。
インプラント治療の保険適用の条件
- 先天的な疾患により、顎の骨の1/3以上が欠損していると診断された。
- 顎の骨の形成不全がみられる。
- 骨髄膜炎・腫瘍などの病気や事故によるケガで、広範囲に渡って顎の骨を失った。
ただし、歯周病や虫歯の進行によって顎の骨を失った場合や、加齢が原因で骨が痩せた場合は対象外となります。
保険適用のインプラント治療が受けられる施設
- 入院用のベッドが20床以上ある病院の歯科または口腔外科である。
- 国が定めている医療機器・医薬品の管理体制が整備されている。
- 当直体制が整備されている。
- 病院の歯科または口腔外科で5年以上の治療経験がある、または
- 3年以上のインプラント義歯の治療経験がある医師が、常勤で2名以上いる。
保険適用されるインプラント治療の診療報酬点数
医者または病院が、診療行為を行った代わりに受け取る報酬を「診療報酬」といいます。健康保険が適用される診療報酬については、診療内容ごとにあらかじめ決められた点数をもとに1点10円で計算され、その一部を患者様が自己負担します。保険適用された場合のインプラント治療の診療報酬は以下のようになっています。
- 保険適用されない自由診療は、診療保険点数に規定されていません。
1. 広範囲顎骨支持型装置埋入手術
顎骨にインプラントを埋入および、アバットメントを連結する手術についての点数は以下の通りです。
- 1回法による手術:14,500点
- 2回法による手術:一次手術:11,500点/二次手術:4,500点
2. 広範囲顎骨支持型補綴
インプラント埋入手術後の補綴治療の点数は以下の通りです。
- ブリッジ形態:18,000点(1/3の顎につき)
- 床義歯形態:13,000点(1顎につき)
3. その他
- 広範囲顎骨支持型補綴診断料(補綴に係わる診断の点数):1,800点
- 広範囲顎骨支持型補綴物管理料(治療後の管理の点数):480点
- 広範囲顎骨支持型補綴物修理(補綴物の修理の点数):1,200点
例えば3割の負担金を支払う場合、2回法による手術にかかる費用は以下の金額になります。(1点10円)
(11,500点 + 4,500点) × 10円 × 0.3 = 48,000円
高額なインプラントの治療費は控除が受けられます
インプラント治療は多くの場合健康保険の適用とならないため、費用が高額になってしまいますが、医療費控除の対象であり費用負担を軽減できる可能性があります。インプラント以外の医療費も対象となるため、申請方法等について事前に確認しておくことが大切です。
控除の対象となる治療費や申請方法についての詳細は、「インプラントの医療費控除」をご覧ください。